ひと月の妹

「良い友達に僕がちょっと辛くなる日は

たまに電話をするかも知れません。」

「そしたら おやすみ とだけ言ってくれますか?」

「緊急事態なら許可します。」

「良かった!」

「優しい友達が辛い時も電話を下さい、」

「僕も おやすみ と言ってあげますよ。」

彼は立ち上がって 私の両手を取って

ソファーから立ち上がらせた。

そして、「今だけふたつ見逃して」と言い

彼は「おやすみ」と言って 私の額に柔らかい

唇が降りてきて私をそっと抱きしめた。

  
「優しい友達は憧れて遠くから

眺めて想像していた学生の頃より

ずっと素敵な女の子だった。」


彼はわたしを放すと少し照れた顔をしながら


「家まで送りますよ。」と来たときのように

私を家まで送ってくれた。


車を降りた彼が手を差し出して私と握手した。

「優しい友達 ふたつ見逃してくれてありがとう。」

彼は笑ってその手を放してくれた。


手を振りながら車が走り去るのを見送った。

   
夜に灯る明るい光に照らされて

月が私に笑いかけてきた。

   
「もっと悪い事したかったのに・・」

彼はどこまでも紳士でいてくれた。

そう囁いて車に乗り込んだ姿を私の心に残して・・・


 



  

  

  

  

  

 

  


 

 

 

 

 
  

 

 
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