ひと月の妹
「僕は少し頭を冷やすべきかな・・・」
「人というのは欲張りなものだな」
「君がこうして僕に会ってくれるから
僕はどんどん欲張りになっている気がするよ」
(圭さんはわたしを抱きしめながら震えている気がした。)
僕が初めて君に会ったのは・・・
高校に入学した15歳の春だった。
男子しかいないクラスメイトたち
音楽の合唱の練習
僕らは渡り廊下に並ばされて
声を疲れさせていた。
君は移動教室に行く途中で
あいつと話しながら連れだって歩いていた
声など少しも聞こえていないのに・・・
その美しい笑顔に僕は一瞬で恋に堕ちた
それから君だけを見ていた
あいつを好きな君をずっと遠くから見ていた。
「僕の片思いは長いな」
「えっ?」
(君を温める人になれても
僕の片思いは続いているから)
「僕は君を温める人だ」
圭さんは座り直してわたしを後ろから抱きしめたまま
両手でそれぞれのわたしの手を握っていた。