ひと月の妹
圭さんのご両親と食事会を済ませ、私は家に急ぎ帰った。
秘密基地で圭さんは大きな写真と婚姻届けを眺めている。
「圭さん、何でそんなにジッと壁を見てるんですか?」
「あっ、お帰り」
「座って、座って」
わたしは圭さんの膝の上に座らされた。
「何してたの?」
「僕の夢が醒めてもこれを見て耐えられるように練習」
「圭さん」
「不安ですか?」
「うん、幸せすぎて怖いなんて知らなかった・・・」
わたしは圭さんの膝から降りて彼を抱きしめた。
(僕の片思いは長いな)
そう言った圭さんの言葉をわたしは思いだした。
「わたしは圭さんが好き」
なんでもいいから彼の不安を取り除いてあげたかった。
これまで口にした事がない『好き』を口にしてみた。
「僕も君が好きだ」
わたし達は、お互い そんな大切な一言を
一度も言わないでここまでたどり着いていた。
思いついて、わたしは圭さんの手に『好き』と指文字を書いてみた。
彼は目を細めて嬉しそうに自分の手の平を食べるフリをした。
「不安にならないで」
「あなたに意地悪する人はいないわ」