ひと月の妹
数日後、紫藤佳代子にわたしは呼びだされた。
「星(アカリ)さん、あなた勝者だったのね?」
「突然、何に対して、わたしが勝者だと?」
「司さんよ、学生の頃から恋愛していたんでしょう。」
「・・・」
「わたくしが幼馴染の壁を超えないでとお願いしていたのに・・」
「おばさま、もう司さんは結婚されたのだし、今さら、そんな話を・・」
「それでも、あなたは司さんの一番だった時期があるのよね」
「一番?」
「そうよ、結婚するつもりだったのでしょう?」
「だから勝者じゃない?」
「わたしは一番だったことはありません。」
「彼の一番は別の人でしたから」
「あなた、司さんの一番じゃなかったの?」
「司さんの一番はわたしではありませんでした。」
「あなたじゃないのなら、誰なの?」
「それは・・・」
「誰なの?」
「言いなさい」
「それは・・・亡くなった方です。」
「亡くなった?」
「あぁ、本庄葉子さんね」
「高2の時の司さんの許婚」
「つまり、あなたは葉子さんの代りに
司さんに・・・」
「そう、そうならいいのよ。」
「おばさま、わたしは勝者なんかではありません」
「そうね、司さんは別の人と結婚したし、あなたは
勝者なんかじゃなく、敗者なのよね」
「もう、いいですか?」
「ええ、気が済んだわ」