ひと月の妹
帰宅した漆黒の瞳をした魔物はさらい人を
喰らうだけでは物足りず
おかしな呪文を耳元に囁きだす
「好きだ」
はぁ?
「おまえが好きだ」
「おまえを好きになったんだ」
こんな全面降伏な魔物なんておかしい
「これから他の人と結婚に向かって
進むんじゃないのですか?」
「しない、するわけがない。
あの女にはもともと他に男がいたんだ。」
婚約者の佳澄さんには別に相手がいたんだ・・・
「お言葉を返すようですが、私も結婚していましたよ」
佳澄さんがダメでも紫藤佳代子は他の婚約者を
また探してくるだろうに
紫藤司さんは それをどうするんだろう?
私の思考は伝える言葉とは
いつも違うことを
思いついている。
「言うな、それ以上言うな!!」
両肩を強く掴まれて動けない
「それはいくらでも消毒してやる!」