ひと月の妹

 仕事は忙しかったが

 時間が少しでも空くと

 妹の様子を見にいった。

 あの頃は あまり寝ていなかった気がする。

 
 おふくろが外国から帰ってきて

 星(アカリ)の意識が落ち着いたと聞き

 見舞いにいくと
 
 『妹はちゃんとそこにいた。』

 眠っている妹はどこか遠くへ

 行ってしまいそうで

 なぜかずっと不安だったからだ。

 
 星(アカリ)は まだぼんやり

 しているようだったが

 オレの手を掴み

 オレをちゃんと見つめてきた。

 確かに生きている。

 彼女は確かに生きている。

 きちんと存在している。

 オレの中の不安は幻だったんだ。

 
 

 
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