ひと月の妹

 紫藤佳代子さん

 司さんのお母さんが会いにきた。

 「羽島みかん」さんを

 うちに引き入れます。

 ご両親やお兄様に気づかれなくても

 お仕事関係を担うのは

 無理ですからね。


 
 眼鏡を掛けて、いつものスタイルで

 わたしは職場にすべての荷物を片付けにいった。

 女子大生スタイルと社会人スタイルに違いをつける。

 あたしは、まだわたしに戻れるのに・・・

 兄には電話で退職を伝えた。

 体調不良でずっと仕事を休んでいて

 すでに仕事は別な人が引き継いでくれているし

 荷物さえ もらってこれば良かったから。

 これは本物のわたししかできないこと。

 だって机の場所も私物も本物のわたししか

 知りえないから。

 現在の羽島みかんさんじゃ

 まごついちゃうし(笑)

 
 机やロッカーのモノを片付けながら

 どんどん わたしの存在が消えていく

 
 わたしが「羽島みかん」で存在した場所が

 消えてなくなる


 



 

 

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