ひと月の妹
司さんの眠りを妨げないように
そっと部屋を後にした。
彼の部屋はわたしが泣く場所ではないから・・・
泣きじゃくって すべてを話してしまえれば楽なのに
司さんの罪も嘘も真実も
それを暴くことも わたしはしたくない。
わたしは彼の妹をすることしかできないんだから・・・
部屋の窓辺の月夜を見ながら
深い海の奥底に沈む
人魚姫の悲哀のように
わたしは窓を開け放して
空に届かぬ手を伸ばしていた。
漆黒の黒い瞳を覗かせるただ一人の想い人に
向かって伸ばす 届くことのない
わたしの恋心をこの月に献上しよう・・・