夕闇がきみを奪う前に
目を開けると、そこは眩しいほどの太陽の光が降り注ぐ海辺だった。

気温も高い。湿気を含んだうっとしい空気が体にまとわりつく。

かんかん照りの太陽がじりじと肌を焦がしていくようだ。


これは、何なんだ。


さっきまで部屋の中でアルバムを見ていた。あいつの写真を見ていた。それなのに。


どうして、こうなった?


海辺には屋台もでるし、海小屋もある。

多くの家族連れや友達連れで大賑わいだ。


ここは、どこだ?


とりあえず日陰に入りたくて海小屋に入った。

中はすごい熱気だった。

空いてる席をひとつ見つけて座ると汗を拭う。


すると店のじいさんが水を持ってきてくれて「いやー、暑いねえ」という。

よく見ればじいさんは白のタンクトップにベージュっぽい半ズボン、麦わら帽子をかぶって、いかにも夏仕様だ。



「はあ」


「水、ありがとうございます」というが早いか、ぐびっと一気飲みする。ぷはあ、とまるでビールを一気飲みしたような声が出た。生き返る。


「いい飲みっぷりだね」


「いやあ、清々しい」とじいさんは、首に掛けた、○○商店街と紺色の文字で書いてある白いタオルで汗を拭く。

にこやかなじいさんに「そうっすかね」とあいまいな返事をした。


するとじいさんは「それにしてもー、あんた」と何かに気づいたのか俺をじっと見た。


「あんた、今は真夏なのにそんなカッコで暑くないのかね?」


俺は耳を疑った。


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