夕闇がきみを奪う前に
「ユキ、どこ?」
不安そうにあたりを見渡すあいつ。
ジュースを両手に二つもっているところからして、海小屋でジュースを買った帰りに迷子にでもなったのだろうか。
確かに迷子になりかねない人の多さ。
砂浜にはいくつものテントやパラソルが立ち並んで、見通しの悪さはこの上ない。
「ユキ」
泣いてしまいそうなあいつの声に、俺はもうどうしようもできなくなって「どうしたの」と声をかけてしまった。
うるんだ瞳が俺を見上げる。
この人、誰?
きっとそう思ってる。
不安げな瞳に恐怖の色がほんのり色づく。
仕方がないことだ。今のこいつにとって俺は見知らぬ大人。
分かっているのに、少し胸が痛い。
「迷子かな?探すの手伝ってあげるよ」
できる限り優しい声と笑顔でそういうと、あいつは目を見開いて「ほんと?」と震えた小さな声で問う。
「うん」
頷くと、少しだけ笑顔になった。
身内には見せない、他人に見せるその表情。
それは切なくて、悲しくて、胸が痛んでしかたないけど、それも心の奥底に押しやって、俺は「行こうか」と微笑んだ。
不安そうにあたりを見渡すあいつ。
ジュースを両手に二つもっているところからして、海小屋でジュースを買った帰りに迷子にでもなったのだろうか。
確かに迷子になりかねない人の多さ。
砂浜にはいくつものテントやパラソルが立ち並んで、見通しの悪さはこの上ない。
「ユキ」
泣いてしまいそうなあいつの声に、俺はもうどうしようもできなくなって「どうしたの」と声をかけてしまった。
うるんだ瞳が俺を見上げる。
この人、誰?
きっとそう思ってる。
不安げな瞳に恐怖の色がほんのり色づく。
仕方がないことだ。今のこいつにとって俺は見知らぬ大人。
分かっているのに、少し胸が痛い。
「迷子かな?探すの手伝ってあげるよ」
できる限り優しい声と笑顔でそういうと、あいつは目を見開いて「ほんと?」と震えた小さな声で問う。
「うん」
頷くと、少しだけ笑顔になった。
身内には見せない、他人に見せるその表情。
それは切なくて、悲しくて、胸が痛んでしかたないけど、それも心の奥底に押しやって、俺は「行こうか」と微笑んだ。