夕闇がきみを奪う前に
好きだったんだ、あいつのこと。

ずっとずっと好きだった。


今でも覚えてる、その始まりは、俺たちがずっと幼かったころ。


俺達の母親は親友同士で、物心がつく前からずっと一緒で。


あいつ、可愛くて綺麗な、大人しいような顔つきをしているのに、一度決めたら『絶対無理』っていくら言っても聞かないような頑固でさ。


『わたしもする!』


なんて、勢いよく決めてやってみるけど、体力なくて、すぐへばるし、すぐ転けるし、すぐドジするし。

ほっとけない従妹(いとこ)、みたいな存在だったけど。


『ねえ、見て、海!』


初めて海をみたときの、あいつの笑顔が。

あいつの目のきらめきが。

きれいで、まるで不純物なんてないほど透明で。

視界がその笑顔でいっぱいになって。


ドクンッて、心臓が跳ねた。



ああ、好きだ、って、心からそう思ったんだ。

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