夕闇がきみを奪う前に
海が好きなのは、きれいだから。


『なみが、きらきらしてる。

すなも、きらきらしてる』


それなら、これも、渡したのなら。


気に入って、くれるのかな。


ごろんと横になる。


急に眠気が襲ってきた。



『…ユキ……ユキっ…!』


「…ん…あ、かり…?」



あいつの声が聞こえた気がした。

そんなわけないって分かってるのに、聞き返してしまった。

タイムスリップして、違う時間軸のあいつとあったせいかな。


俺はそのまま意識を手放した。

まるで深い闇に落ちていくみたいに、すうっと眠りに落ちていった。






__ユキ。


夢の中で呼ばれたその声は、聴いたことある、なんてもんじゃなくて。


__ユキ、ユキ。


愛しくて、抱きしめたくて、仕方がない。



なあ、お前、アカリなんだろ。

俺をそんなあだなで呼ぶのなんて、お前しかいねえもん。


__さすが、ユキ。


あいつは笑っているような気がした。

不思議だな、顔さえ分からないのに。


__いっつもユキにはばれちゃうな。


そりゃあな。お前、すっげえ分かりやすいもん。


__それは不服だな。


ジョーダンだよ、ジョーダン。

お前のこと、分からないわけないだろ。

今までどれだけの時間一緒にいたと思ってんだよ。


するとあいつはクスクス笑った。

きっと、肩を揺らして、左手の拳を口元に持ってきて、いつものあいつの笑い方で笑ってるんだろう。
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