夕闇がきみを奪う前に
なあ、お前、どこにいるんだよ。

真っ暗すぎて何も見えねえよ。

お前は俺がどこにいるか分かってんのかよ。


なんとなくあいつが頷いたような気がした。


なんだよそれ、むかつくな。

お前だけ俺が分かるなんてずるい。

俺、お前がどこにいるかぜんっぜん分かんねえのに。クソ。


__相変わらず子供っぽいなあ。


うっせえよ。


俺はそっぽ向いた。

いや、あいつがどこにいるのか分からないから『そっぽ』になってないかもしれないが。


__ほんと、ユキは変わんないね。


ああ?いつからの話だよ。



__私が死んでから。



その声がやけにはっきり響いたように感じた。

そのときドクンと心臓が大きく跳ねた。

まるで、ここにいるぞ、と心臓が主張しているように。


な、なに言ってんだよ、お前。

死んだとか、そんなことさらっと言うなよ!

まだ俺引きずってんだよ!


あいつの声で、あいつが死んだとか言うから、俺はすっかりうろたえてしまった。


__だって、ほんとのことじゃん。


そうかもしれねえけどさあ、そういうのはまだ言わないでほしいもんだぜ?遺された身としてはよ。

っていうか、まだ『四十九日』も来てないのに。


__きたら、ダメだったんだもん。


あいつはそうはっきり言った。

それは事実を淡々と述べているようでもあったし、どこか悲しそうでもあった。


__『四十九日』が来ちゃったら、ユキに会えなくなるでしょ。




その瞬間、真っ暗で何も見えなかった視界に、あいつの姿が映った。

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