夕闇がきみを奪う前に
俺は目を見開いて言葉を失った。

次の瞬間には視界は滲んでいた。涙だ。


__あーあ、泣いちゃった。


あいつはいたずらっ子な笑顔でそういった。


うっせえよ。


俺は冷たく言い放つけど、あいつにはまるで効果なし。

ハイハイ、そうですかー、なんて流してやがる。何子ども扱いしてくれてんだよ、むかつく。


なあ、お前さ、俺がどれだけお前に会いたかったか、分かるか?

お前を失ってからさ、俺がどれだけ堕落したか、知ってんのか?


__知ってるよ。


あいつは笑っていた。

悲しそうに、切なそうに、目を細めて笑ってた。


__あたしだって、会いたかったよ。


俺は駆け出していた。

あいつを抱きしめようとした。


それなのに。


なんで歩いても歩いても、走っても走っても、お前に近づけない?

どうして届かない?

すぐそこにいるだろ、2メートルも離れてねえだろ?

なあ!



__ダメだよ。



あいつは小さな声で否定する。



__もう、お別れの時間だよ。



なあ、何言ってんだよ。

俺がこの1か月、どれだけお前に会いたかったか、それをお前は知ってるって言っただろ。

同じ気持ちでいてくれただろ。

それなのに、なんでだよ。

なんでなんだよ!



__仕方ないよ、そういうものだから。



あいつはにこっと目を細めて笑った。


なんでだよ、なんでなんだよ、お前!

どうしてこんなこと受け入れられんだよ!

なんであがこうともしねえんだよ!

お前だって俺に会いたかったって、言ってくれたじゃねえかよ!
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