夕闇がきみを奪う前に



はっと起き上がる。

心臓が嫌なほど心拍している。

尋常じゃないくらい汗が流れてる。

おまけに呼吸まで乱れている。


汗が気持ち悪くて、とりあえずシャワーを浴びるため浴室に向かう。


…なんだ、今の夢は。


あいつ、だったのか?


あいつが出てきたのか?


あいつと会話したのか、俺は?


シャワーの湯が流れる音だけが響く中、流れ落ちる水音に混ざって涙が溢れた。


あいつに会えて嬉しいのか、悲しいのか、悔しいのか、苦しいのか、切ないのか、何なのか。

いろんな感情が混ざりあったこの気持ちをなんて名付けたらいいのか分からない。

なんで涙が溢れてくるのか、その理由さえ分からなかった。


ただひとつ、分かっていたのは。


『あいつに会いたい』


そう願う感情が、確かに存在していることだけ。

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