夕闇がきみを奪う前に
「え…?」

涙をぽろぽろこぼすあいつを抱き寄せた。


「俺だっていつまで生きれるか知らねえよ。

交通事故ですぐ死ぬかもしれねえし、病気になって死ぬかもしれねえ。

分かんねえよ、未来のことなんて。

誰にも、分かんねえよ」


神様や運命じゃないのなら。

それこそタイムスリップでもしない限り、誰だって知ることができない。

未来は、誰も知らない。



「それでもお前がいてほしいって思うよ。

俺の隣にお前がいてほしいって思うよ」



お前を失くして、どれだけ俺が悲しんだか、苦しんだか、悔やんだか。

それこそ死ぬことさえ考えた。

お前のそばにいけるなら、と。

お前の笑顔を思い出して思いとどまったけれど。


お前が生きてなきゃ俺の人生なんて価値がねえんだよ。


それくらいに俺がお前のことを思ってるって、知ってんのかよ。


お前はどうやら知らないらしいな。

だから「でも」とか言って、俺の言葉を遮るんだよ。バカ。


「私っ、ユキのそばにいられなくなるかもしれないから…っ、私以外の人の方が…っ」


「だから」


バカなことを口走る前に、俺は大きな声で遮った。




「…お前じゃなきゃ、ダメなんだよ」


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