夕闇がきみを奪う前に
__ねえ、ユキ。


あいつは俺の言葉を無視して話し出した。



__ユキは分かっているんでしょう? 私があんたを過去に導いたこと。


どきりと心臓が大きく鳴った。


何となく、分かっていた。

あいつが導いてくれたこと。

タイムスリップの度に、その瞬間に、あいつの声が聞こえていたから。


それに、あいつくらいだと思ったよ。

俺なんかの願いなんて叶えてくれるのは。


俺は嫌われ者だ。


神様にだって、嫌われている。



__分かるよね? 私が言いたいこと。



あいつは笑っていた。



あいつが俺を過去に導いた。


恋が始まったときと、指輪を渡すときに。


それは、きっと。



__始めたものは、終わらせなきゃ。



お前のことを、忘れろって言ってんだろ?


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