夕闇がきみを奪う前に
響いた言葉は、残酷なまでに悲しくて。

あいつは笑っているのに、泣いているように見えた。

泣きたがっているようにも見えた。


なあ、お前、本当は、泣きたいんだろ?

嫌なんだろ?

それなのに、どうしてお前は終わらせたがる?

忘れてほしいと願う?


あいつの表情が少し揺らいだように感じた。


__そんなことない。嫌だなんて思ってない。そんなことを思うくらいなら、こんなこと、こんなことなんて、望まない!


強くなる語尾。

あいつが強がってるって分かった。


嘘つかなくてもいい。

全部、全部分かるから。

お前のことなら、分かるから。


__嘘じゃ、ない。


俺を誰だと思ってるんだよ?

お前のこと、どれだけ長い間見てきたと思ってるんだよ?

誰よりお前のことを分かってるのは、この俺だ。


だから、分かる。

お前の嘘も、本当は終わらせたくないことも。


だから、いや、だからじゃねえな。


俺は、終わらせない。

終わらせたくない。

お前のことがこんなに好きなのに、どうして忘れないといけないんだよ?


__好きだからだよ。


あいつの悲しそうな声が響いた。


__あんたが私のこと、今でも好きだからだよ。

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