夕闇がきみを奪う前に
思考は回らなくて上の空。

生きているのに死んでいるのと変わらないような、まるでもぬけの殻。

感情がなくなった人形のように、ただただ時間だけが過ぎていくような、そんな日々。


__そんな毎日を、送ってほしいと思う?


あいつは目にいっぱいの涙を蓄えていた。


__大好きなひとがあんな生活を送っているのを見て、私、悲しくて仕方がなかった。



ぽろり、ぽろり、涙がこぼれては頬を伝う。


__すごく好きでいてくれたんだなって分かったよ。痛いくらいに分かったよ。

だけど私のせいでユキがそんな生活を送るなら、私のこと、記憶から消してほしい。



…ああ、そうか。



__ユキには幸せになってほしい。幸せな日々を送ってほしい。



…お前に苦しい決断をさせたのは、俺だったんだな。


でも、俺もワガママだからさ。

お前に頼まれても、お前のことを忘れることなんてできねえよ。

お前との恋を終わらせるなんてできねえんだよ。

だってお前だけが好きなんだから。

もうどうしようもないくらいに、好きだから。
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