夕闇がきみを奪う前に
__ちゃんと恋もするんだよ?結婚もするんだよ?


バカ、お前以外に好きになれるやつなんていねえよ。


__だからってずっと一人でいたら許さないよ。


脅すようなことを言ったあとで、大丈夫だよ、とあいつは付け加えた。



__ユキはこれから「好きな人」に出会えるよ。



何を根拠に言ってんだよ、そんなこと。

俺はお前しか見てないし、お前以外を好きになれないんだけど。



__出会えるよ。好きな人に、大切な人に。

だってユキには、こんなに広いセカイが待ってるんだから。



また地面がパリンと音を立てて割れて、白い光が差し込む。

四方の壁も音を立てて壊れていく。



__さよならだよ、ユキ。



あいつは笑って言った。



お前が大好きだ、アカリ!

この先ずっと、大好きだ!


俺は大声で叫んだ。

壊れていく空間の中でもあいつに聞こえるように。

この声が枯れるくらいに、思いを全部ぶつけるように。


あいつは目を見開いて、微笑んだ。



__私も大好き。ずっと、大好き。



それから俺たちは白い光に飲み込まれた。

あまりの眩しさに目を閉じた。

涙が止まらなかった。





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