夕闇がきみを奪う前に



やっぱ俺、お前のこと好きだ。大好きだ。

絶対忘れられない。

忘れたくない。

実際、忘れなかったぞ。この数年間。

驚いたか?まさか本当に忘れなかったとは…なんて思ってるか?

バカにするなよ、俺のお前への気持ち。

中途半端な気持ちで指輪を渡したりしねえからな。思い知ったか!

そんな偉そうなことを言ったけどさ、お前の死を受け入れられたのは、多分あの瞬間があったからだと思うんだよな。

なあ、お前は覚えてるか?夢の中で出会ったこと。

真っ暗な空間に、俺たち二人きりでさ。

数年たった今も、俺は忘れられねえよ。

お前のこと、忘れられねえよ、やっぱり。

大好きだよ、今もずっと。

会いてえよ、すごく。

なんて言ったら呆れるか?でも本当にそう思ってんだ。

それに今日くらい許してくれよ?

今日はお前の命日なんだから。


俺は笑ってあいつの墓に花を手向けた。

花なんて何がいいか分からなかったから、あいつが好きだったオレンジ色の花を頼んだ。

あ、花屋任せだなんてすねるなよ。俺だって頑張ってはみたけどさ、花は無理だった。どれも同じに見えてくるんだから。
< 50 / 53 >

この作品をシェア

pagetop