夕闇がきみを奪う前に
慌てて病院に駆けつけたら、あいつの両親とうちの母親がいて、泣いていた。

あいつはベッドに横になって、顔に白い布がかけられていた。

俺は目を見開いた。

信じたくなかった。

こんなの、現実じゃないって思いたかった。


そしたら俺に気づいたお母さんが俺を廊下に引っ張って、静かに泣きながら説明してくれた。


あいつ、今日が自分の20歳の誕生日だったから張り切っていたんだって。

いつもは滅多に行けない病院の庭に朝から出てみたり。

今日はいつもより嬉しそうだったって看護師さんが言ってたって。


『運動して、早く元気にならなくちゃ』

っていうのが、あいつの最近の口癖だったんだって。俺、知らなかったよ。


それで病室に帰るとき、車が来ているのに子どもが道路に飛び出したのを見たんだって。病院の敷地内の道路に。


それであいつ、どうしたと思う?


まさかだったよ。一緒にいた看護師さんの制止もふりきって子どもを守ろうって飛び出して行ったんだ。
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