午前四時のフェアリーテイル


「流れ星…」


濃紺の空を星が流れていった。

わずか一秒にもみたない僅かな光。

それから凛子は少し口元を緩ませて「見れて良かった」と言った。

「そうか、今日は流星群の日だったか」

ニュースでそんなことを言っていたのを思い出す。俺の呟きに凛子は頷く。


「流れ星になりたい」


突拍子もない上に短すぎる凛子の言葉を理解するには時間がかかる。

どういう意味だと考えようとしたところで凛子は珍しく付け加えをした。


「流れ星はみんなに嫌われたりしない」


それでもやつの言葉は短かった。

けれども言葉の意味を理解するには十分すぎた。


俺はずっとこいつは何も考えずにまっすぐだと思っていた。自分の考えを貫くから悩みもないのだと思っていた。

でも本当は違った。

こいつはこいつなりに悩んでいた。

真っ直ぐであり続けるのは難しい。

流れ星だってあんなに真っ直ぐに輝くのに、ほら、僅かな一秒にも満たない間に消えてしまう。

俺は空を見上げた。

まるで大地に星が降り注ぐみたいに、尾を引いて流れていく星達。その輝きは凛子のようだとも思ったけど、やっぱり違う。


「お前は流れ星にはなれねぇよ」


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