夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
私は俯いて両手で顔を覆う。

マスクがかさりと音を立てた。


「あんたのせいで……私は……」

「俺のせい?」


呻くように言った私の言葉を遮り、青磁が声をあげた。


「違うだろ」


冷ややかな声。

さすがに謝ってくれるのではないかとどこかで思っていたから、驚いて思わず顔をあげた。


青磁の目は、いつも以上に透明で静かだ。


「俺のせいじゃないだろ。お前のせいだろ」


あまりに酷い言葉に息を呑む。

こいつには罪悪感というものはないのだろうか。


「お前がマスクを外せなくなったのは、お前が悪いんだろ。原因はお前にあるんだろ」

「………」

「それをいつまでも認めずに逃げてるから、お前はいつまで経ってもそのままなんだよ。マスクなんかに馬鹿みたいに依存してるんだよ」

「………」

「そんなぺらっぺらの紙なんか、お前を守ってくれねえぞ」


そんなこと、分かってる。

でも、声が出なかった。

青磁の言葉に自由を封じられたように、私はへたりこんだままで青磁を仰ぐことしかできない。


「お前を守れるのは、お前の心を守れるのは、お前だけだ」


打ちのめされている私に、さらに青磁の言葉は容赦なく、矢のように降り注ぐ。


「自分のことは、責任持って自分で守れ。ぽっきり折れて壊れちまう前に、自分の心は自分で守れ。いつまでも被害者面してんな。馬鹿の一つ覚えみてえに我慢ばっかりしてんじゃねえよ」


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