夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
怪訝に思って顔をそちらに向けた瞬間、目の前に、


――雨上がりの青空と、色鮮やかな虹が広がった。


「……えっ」


私は息をのんで、呆然とその美しい光景に目を奪われる。


「どうだ、いいアイディアだろ」


ふふん、と自慢げに笑う青磁。


今、私の視界を占領している綺麗な空は、彼が描いたものだった。

ビニール傘の裏に、アクリル絵の具で描いた、美しい空の絵。


「……びっ、くりしたあ……」


驚きすぎて、そんな返答しかできない。


だって、まさか、傘に絵を描いていたなんて。


「だろ。いやあ、やっぱ俺は天才だなー」


歌うように言いながら彼は、青空の傘を差して、雨の中へと足を踏み出す。


「来いよ、茜」


手招きされて、私も雨の中に飛び出した。

そして、青磁が差す傘の中に身体を滑り込ませる。


見上げると、白っぽい灰色の雲が晴れてその向こうに広がった青空、雲間から射し込む陽の光、そして七色の虹。


「……綺麗」


雨上がりの世界がそこにはあった。


「お前が、雨は嫌だとか我がまま言うから、仕方なく晴れを用意してやったんだ。感謝しろ」


偉そうに青磁が言う。


「うん、ありがとう」と微笑みかけると、青磁は一瞬目を丸くして、「……調子狂うな」とぼやいた。


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