夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
*
「……なに? なんか付いてる?」
青磁が訝しげにこちらを見てきて、それで初めて、自分が彼の横顔を凝視してしまっていたことに気がついた。
「……いや、べつに、たまたま視界に入っただけ……」
慌てて首を振ると、青磁は「あっそ」と言って前に向き直り、画材の準備に戻った。
なんとかごまかせたかな、とほっと息をつく。
今までと同じように屋上で肩を並べて座っているだけなのに、彼への気持ちを自覚してしまってからは、ひどく落ち着かなくてそわそわしてしまう。
それをごまかすために、マフラーをマスクの上からぐるぐる巻きにして肩をすくめているけれど、目が勝手に青磁のほうを向いてしまうのだ。
「なに、寒いの?」
また青磁が首をかしげて訊いてくる。
寒いのは確かに寒い。
だって、もう十二月だ。
こんな時期に屋上にいるなんて、普通に考えたらおかしい。
でも、私は青磁と二人きりになれるこの時間を失うのが惜しくて、「寒くない」と首を横に振った。
『寒いならもう屋上に出るのはやめよう』なんて話になったら困ると思った。
「青磁は?」
「ん?」
「青磁は寒くないの?」
「べつに。コート着てるし、平気」
「そう」
よかった、と思ったけれど、それは口に出さない。