夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
『青磁色』。

そんな色があることを私は知らなかった。


じっとその色を見つめる。

一言では言い表しがたい、不思議な奥行きのある色だ。


水色の絵の具に淡い黄緑を少し加えて、それを水に溶かして、柔らかい筆で薄く薄く伸ばしたような色。


黙って凝視していると、ふいにページに影が落ちた。

目をあげると、青磁が本を覗き込んでいた。


「いい色だよな、青磁色」


嬉しそうだ。ほんと、単純。

宝物を見つけた子どもみたいだ。


「うん、いい色」


私も頷く。


「湧き出たばっかりの泉みたいな、瑞々しい感じ。すごく綺麗な色だよね」

「おっ、詩的。さすが文学少女」


からかうように言われたけれど、私はいたって本気だった。


青磁色、淡くて穏やかな色。


鮮烈で華やかな印象のある青磁とは違うな、と一瞬思ったけれど、

次の瞬間には、やっぱり青磁にそっくりな色だと思い直した。


瑞々しくて、優しい。

青磁の心そのものだ。


彼の外見も自由奔放な行いも人とは違って目立つから、派手な印象が強いけれど、

青磁は本当は、とても穏やかで柔らかくて、優しい人だ。


……なんてことを考えていると、だんだん恥ずかしくなってきた。

どんだけ青磁のこと好きなのよ私、と自分で自分に突っ込みたくなってしまう。


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