夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
黙りこくっていると、青磁が私の手から本を取り上げた。
「なあ、これ、見た?」
ぱっと私の目の前で開かれたページには、暖色系の明るい色がたくさん並んでいた。
「え? なに?」
「ほら、ここだよ。見てみろ」
青磁が指先で指し示したのは、『茜色』と書かれた色だった。
「え……茜って、色の名前なの?」
自分の名前だけれど、まさか色名だったとは全く知らなかったので、私は目を丸くして青磁を見た。
「いや、茜ってのはもともとは植物の名前。根っこを乾燥させると橙色っぽい赤になるから、『赤根』って名前がついたらしい」
「へえ……全然知らなかった」
「花は白っぽい黄緑の地味な花なんだけど、根っこはすげえ綺麗な赤なんだよ。だから昔から草木染めに使われてて、茜染って呼ばれてる」
流れるように言葉が出てくるので、私は呆然として青磁を見た。
「……詳しいね」
思わずそう言うと、青磁は一瞬意表を突かれたような顔をして、それから「当たり前だろ」と笑った。
「俺は絵描きになるんだから、染料のことは勉強してるんだよ。すげえだろ」
最後の一言がなければ尊敬の言葉を言おうと思っていたのに、自分で言ってしまうのだから拍子抜けする。
「あーはいはい、すごいすごい」
わざと呆れたように言うと、青磁が「生意気!」と私の頭をがしがしかき回した。
「なあ、これ、見た?」
ぱっと私の目の前で開かれたページには、暖色系の明るい色がたくさん並んでいた。
「え? なに?」
「ほら、ここだよ。見てみろ」
青磁が指先で指し示したのは、『茜色』と書かれた色だった。
「え……茜って、色の名前なの?」
自分の名前だけれど、まさか色名だったとは全く知らなかったので、私は目を丸くして青磁を見た。
「いや、茜ってのはもともとは植物の名前。根っこを乾燥させると橙色っぽい赤になるから、『赤根』って名前がついたらしい」
「へえ……全然知らなかった」
「花は白っぽい黄緑の地味な花なんだけど、根っこはすげえ綺麗な赤なんだよ。だから昔から草木染めに使われてて、茜染って呼ばれてる」
流れるように言葉が出てくるので、私は呆然として青磁を見た。
「……詳しいね」
思わずそう言うと、青磁は一瞬意表を突かれたような顔をして、それから「当たり前だろ」と笑った。
「俺は絵描きになるんだから、染料のことは勉強してるんだよ。すげえだろ」
最後の一言がなければ尊敬の言葉を言おうと思っていたのに、自分で言ってしまうのだから拍子抜けする。
「あーはいはい、すごいすごい」
わざと呆れたように言うと、青磁が「生意気!」と私の頭をがしがしかき回した。