夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく







「おねえちゃん、なにしてるの? それ、おべんと?」


まだ暗いうちに起きて台所でサンドイッチを作っていると、その音で目が覚めたらしい玲奈が、眠そうに目を擦りながら寄ってきた。

うん、お弁当、と答えると、その目が輝きはじめる。


「えんそく、いくの? れなもいくー!」


どうやら私がお弁当を作っているのを見て、遠足かなにかに行くと思ったらしい。


私は首を横に振って、「遠足じゃないよ」と答える。


「じゃあ、なにー?」


そう問い返されて、反射的に浮かんだ言葉は、なぜか『デート』だった。

慌てて心の中でそれを打ち消し、一口サイズに切ったサンドイッチを弁当箱に詰めていく。


「ただのお散歩だよ」


かろうじてそう答えると、玲奈は「おさんぽ? れなも!」と言った。


「うーん、今日はちょっと、ね。また今度連れてってあげるから」

「えー? きょういきたい!」

「わかった、じゃあ、明日。明日連れてってあげる」

「きょうがいいー!」


大声をあげながらまとわりついてくる玲奈に辟易していると、その声が消えたのか、やっぱり眠そうな顔のお母さんがリビングに入ってきた。


「朝からわめいてどうしたの、玲奈。まだ真っ暗よ」

「おねえちゃんとおさんぽいくの!」

「いや、あのね、今日は……」


思わず声をあげて話を止めると、お母さんが私の手もとを見た。


「あら、珍しい。お弁当作ってるの?」

「……あー、うん、まあ。今から出かけるから、朝ごはんに……」


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