夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
*
「おねえちゃん、なにしてるの? それ、おべんと?」
まだ暗いうちに起きて台所でサンドイッチを作っていると、その音で目が覚めたらしい玲奈が、眠そうに目を擦りながら寄ってきた。
うん、お弁当、と答えると、その目が輝きはじめる。
「えんそく、いくの? れなもいくー!」
どうやら私がお弁当を作っているのを見て、遠足かなにかに行くと思ったらしい。
私は首を横に振って、「遠足じゃないよ」と答える。
「じゃあ、なにー?」
そう問い返されて、反射的に浮かんだ言葉は、なぜか『デート』だった。
慌てて心の中でそれを打ち消し、一口サイズに切ったサンドイッチを弁当箱に詰めていく。
「ただのお散歩だよ」
かろうじてそう答えると、玲奈は「おさんぽ? れなも!」と言った。
「うーん、今日はちょっと、ね。また今度連れてってあげるから」
「えー? きょういきたい!」
「わかった、じゃあ、明日。明日連れてってあげる」
「きょうがいいー!」
大声をあげながらまとわりついてくる玲奈に辟易していると、その声が消えたのか、やっぱり眠そうな顔のお母さんがリビングに入ってきた。
「朝からわめいてどうしたの、玲奈。まだ真っ暗よ」
「おねえちゃんとおさんぽいくの!」
「いや、あのね、今日は……」
思わず声をあげて話を止めると、お母さんが私の手もとを見た。
「あら、珍しい。お弁当作ってるの?」
「……あー、うん、まあ。今から出かけるから、朝ごはんに……」