夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
視界に映るものは全てひっそりと寝静まっていて、唯一動くものは、青磁と私が吐く白い息だけ。


しばらく行くと、住宅街を抜けて平坦な道に出た。


まだ人影もまばらな国道沿いの道を歩いて、橋を渡って川を越える。

それから、こんどは川べりの道歩いていく。


広々とした土手の両側には視界を遮るような建物もないので、空がやけに広く見える。

まっすぐな道のはるか先まで見えて、この時間が永遠に続きそうな錯覚を覚えた。


大きな橋と橋の間の、ちょうど真ん中あたりまで来たところで、青磁が足をとめた。


「ここ、降りるぞ」


芝の生えた斜面にコンクリートで作られた簡素な細い階段をくだると、土手から河川敷に降りられる。

この川は、このあたりでいちばん広い川で、流れは穏やかだ。


向こう岸にも同じように河川敷があり、その上には遊歩道がある。

その遥か向こうには大規模な工場地帯があって、たくさんの煙突がそびえており、そのうちのいくつかは白い煙を吐き出していた。


青磁が斜面に腰を下ろしたので、私もその隣に座る。

やっぱりジーンズを履いてきてよかった、と思った。


綺麗に生えそろった芝生には、朝露がついている。

そろそろ霜がつく季節だ。


「いい眺めだろ」


青磁が言ったので、私は川のほうに視線を向ける。

川があるおかげで、近くには視界を遮るようなものはない。

空がとても広く感じられた。


今日の空は、冬らしくけっこう雲が多くて、でもそれは雨雲のように重いではなく、薄い雲が全体に広がっている感じだ。


< 206 / 300 >

この作品をシェア

pagetop