夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
太陽が地平線から離れると、さっきまで目まぐるしく変化しつづけていた空が、やっと落ち着いた。


ふうっと息を吐き出す。

今までずっと息をつめていたのだと、そこで自覚した。


青磁も同じように大きくて息を吐いて、深呼吸をして芝生の上に寝転がった。


「あー、やべえ。朝焼け、綺麗だったな……」


青磁は思い出すように目を閉じて、微笑みながら言った。

私は身体の両側に手をついて、空を仰ぐ。


「帰ったら絵にしよう」


わくわくした声音で言った彼が、寝返りをうって、その拍子に指先が触れ合った。

どきりとして手を引こうとしたけれど、その前につかまれてしまう。


「え……っ、なに」

「つめてえ」


驚いて青磁を見ると、眉根を寄せて彼は呟いた。


「お前の手、冷たいな」

「……冬、だから……」


それでも、青磁の手は温かかった。


「赤くなってる」


寝転んだまた私の手を握りしめてじっと見つめていた彼が、ふいに顔を上げて私を見上げる。

それから、両手で私の手を包み込んだ。


温もりに包まれて、その温かさを嬉しく思ったのは一瞬で、次には恥ずかしさで落ち着かなくなる。


柔らかくて、温かい青磁の手。

私の冷たさを確かめるように、何度も握りしめられる。


鼓動がうるさくて、それが彼に届いてしまいそうで、私は俯いて手を引っ込めた。


「……もう、大丈夫だから。ありがと。ごはん、食べよう」


なにか言われる前に、鞄から弁当箱を取り出して膝の上に広げた。


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