夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく







翌朝、まだ暗いうちに起きて準備をして、十時の開館時間に間に合うように家を出て、県立美術館へと向かった。


うちは芸術なんて縁のない家だから、学校行事以外で美術館に行くのは、初めてのことだった。


県立美術館に行くには、いつも使っている駅から電車に乗って三回も乗り換えなければならない。

迷わないかと心配だったけれど、前の晩にネットで下調べをして何度も確かめたので、思いのほかスムーズに美術館の最寄り駅に着くことができた。


駅から美術館までは、一本道だった。


車道の両側に、冬枯れの街路樹の並木と、綺麗なタイルで舗装された歩道がある。

うっすらと霜の張ったその道を踏みしめ、肩を竦めて歩いていく。


今日はいちだんと寒い。

マフラーを口許までぐるぐる巻きにして、手袋をつけた手をコートのポケットに差し入れていても、震えがくるほどだ。


ふっ、と息を吐くと、マスクとマフラーの隙間をかいくぐるようにして白い蒸気が空へと立ち昇った。


まだ午前中だからか車はあまり通らず、歩行者もほとんどいない。


美術館が見えてきた。

門柱には『県高校美術展』と書かれた大きな看板がかかっている。


胸が高鳴った。

あの中に青磁の絵が飾られていると思うと、動悸が早まるのを押さえようがない。


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