夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
青磁がため息をついて歩き出す。

私は後を追った。


そのゆっくりとした足取りから、別に私から離れようとしているわけではないと分かり、ほっとする。


回廊を巡って美術展の反対側まで来ると、青磁は『展望台』と書かれた自動ドアをくぐった。


ドアを抜けると、幅の広い真っ白な階段があって、上からは溢れんばかりの光が降り注いでいる。


青磁が階段を登りはじめた。

目映い光の中に、青磁の形の影ができる。


眩しさと、言葉にならない気持ちに目を細めながら、私も階段をのぼった。


半分くらいまできたところで、大きな窓と、その外に広がる優しい水色の空が見えた。

展望台は、硝子張りになったドーム天井の端から外が見られるように作られたものだった。

視界いっぱいに広がる大きな窓。


「……すごい眺めだね」


窓硝子に張りつき、息をつめて空を見つめながら言うと、青磁が「すげえだろ」と笑う。


「なんで青磁が自慢げなのよ」

「だって、俺が見つけて、俺がお前をここに連れてきたんだから、すごいのは俺だろ」


相変わらず自分勝手な論理だ。

でも、その身勝手さがあまりに懐かしくて、目頭が熱くなった。

今日は涙腺がおかしい。

少し心の動きで涙が滲んでしまう。


ぽろりとこぼれた涙が、頬を伝って、顎の先を濡らした。

マスクに遮られることなく。


視線を感じて目を向けると、青磁が微笑んで私を見ていた。


「マスク、やっと外せたな」


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