夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
手が伸びてきて、髪に触れられる。

どきりとして硬直していると、


「偉かったな」


と柔らかい声がして、くしゃくしゃになるまで頭を撫でられた。


それだけで、震えるほどの怖さを押しきった勇気が報われた気がして、嬉しくなった。


ふ、と声が洩れる。

ぽろぽろと涙がこぼれた。


「ばーか。なにこんなことくらいで泣いてんだよ。ガキか」


ははっ、とおかしそうに青磁が笑う。

私は「うるさい」と言い返しながら涙をぬぐった。


青磁はくすくす笑いながら近くにあったベンチに腰かける。

左側を空けて。


隣に座ってもいいということだろうか。

どきどきしながら、彼の左に腰をおろした。


「それにしても」


青磁が頭の後ろで腕を組み、硝子越しの空を仰ぎながら唐突に言った。


「まさかお前が来てるとは思わなかった」

「……うん。風の噂で、大賞とったって聞いて」


里美さんから教えてもらったということは、いちおう黙っておこう。


「……絵、見たのか」


こくりと頷く。

なんと言えばいいのか分からなくて、思いついたまま、


「ありがとう」


と囁いた。


「すごく綺麗な絵だった。ありがとう」


ふん、と青磁が鼻を鳴らす。

どうやら照れているらしい。


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