夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
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ステージ上で行われているリハーサルをぼんやりと眺めながら、もう明日が文化祭か、と思った。
こめかみを汗が伝う。
九月になったとはいえ、まだまだ暑い日が続いていた。
上方の窓と出入り口の扉を全開にしてもほとんど風が通らない体育館の中は、むっとした湿気がこもっている。
「動きはだいたいオッケーだな」
少し離れたところで私と同じようにリハーサルの様子を見ていた青磁が呟いた。
それからステージ上の役者たちに向かって声を張り上げる。
「あとは台詞! 声ちっさすぎて聞こえねえから、腹から声出せ、お前ら!」
はーい、と口を揃えて答える彼らを見ていると、くらりと目眩がする気がした。
クラスの出し物が、どんどん私の手から離れていく。
私の存在が、どんどん希薄になっていく。
たぶん私は今ここにいなくてもいい。
いなくてもクラスは成立するし、きっと劇は上手くいく。
いる必要がないということが、誰にも存在を求められていないということが、私には分かっていた。
でも、すがるように私はここにいる。
ただ、いるだけ。立っているだけ。
それでも、ここから立ち去ることができない。
いなくなればたぶん、私は本当にクラスにおける存在意義も居場所も失ってしまう。