恋愛の始め方
「脳外科医だしね」

「そこじゃねぇだろ」


わかってるし。

ただ、話を変えようと思っただけだし。

一々、突っ込まないで貰いたい。


「俺も、志乃みたいな考え方が出来たらな。そしたら、こんな気持ちになることなんてなかったんだろうな」


独り言のように呟かれた言葉に、あたしは返答に困る。


「さっき、脳の手術したって言っただろ?お袋。その手術したの、俺なんだよ」


あたしは何も言わず、黙って直哉の話に耳を傾けた。


「成功率は、決して低くなかった。俺も、絶対大丈夫だと思ってた。だけど」


直哉の視線の先に居る、お母さん。

術後、お母さんは目を覚まさなかった。

そう、言葉を続けたいのだろう。

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