恋愛の始め方
パッと見、心臓の腫瘍のようにも見える。

だけど、これは腫瘍なんかじゃない。

あたしは腫瘍にメスを入れ、その隙間から中のモノを挟む。

そして、直哉に見せる。


「これが、ほのかちゃんのことを苦しめてた原因」

「まさか!ガーゼオーマ」

「そう。取り除くから」


そう言い、あたしはまた手を動かす。

長年放って置いたせいで、癒着が激しい。

細かい作業が要求されるが、悠長なこともしていられない。

あたしは集中し、慣れた手つきで手術を進めた。

直哉の手助けもあり、順調に手術を成功できた。

久々にした手術のせいで、疲労が一気に体を襲う。


「完璧過ぎて、呆れる領域だよ」

「褒め言葉として、受け取って置く」


直哉とそんなやり取りをしながら、手術室を後にする。

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