恋愛の始め方
そして、その足でほのかちゃんのお母さんの元へと向かった。

不安そうな顔をしているほのかちゃんのお母さんに、あたしは小さな笑みを零す。


「い、とぅ、先生」

「手術は無事に終わりました。術後の様態次第ですけど、今までみたいに苦しむことはないと思います」

「ありがとうございます」


そう、何度もほのかちゃんのお母さんはお礼の言葉を繰り返す。

戻って来た、医師の世界。

きっと、前のように生き苦しい世界だろう。

今日は運よく助けられたけど、いつ責められ、また「人殺し」と汚名を着せられる日が来るかもわからない。

だけど、そうならない為に、あたしはまた医師として腕を磨かなきゃイケないんだ。

あたしはまだ、医師として未熟だから。

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