恋愛の始め方
「手術が成功したのは良いが、患者を苦しめてた原因がガーゼオーマだったとはな」


直哉があたしにだけ聞こえる声で、ため息混じりに言い捨てる。


「医療ミスは大問題。だけど、それを隠そうとするのは、もっと問題だと思う。患者が苦しんでるのに、治療もせず、検査で先伸ばしにするなんて、医師として最低な判断」

「患者の家族は、今回のこと知ってるのか？」


紹介状には書いたが、あたしも詳しいことをほのかちゃんのお母さんには話していない。

だから、ほのかちゃんのお母さんは自分のことを責めた。

元気に産んであげられなかった、自分のせいだと。


「ほのかちゃん家族は、知らない」

「そうか。なら、このまま言うな」


それが正しい判断じゃないことは、直哉も理解していて、あたしにそんなことは言っているのだろう。

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