恋愛の始め方
「最善は尽くす。でも、責任は」

「取らなくて良い」


あたしの言葉を遮り、直哉は言い放つ。


「お袋の子供として、医師として、俺は最善の判断をしたと思ってる。だから、志乃が責任を感じる必要はない。これ以上の決断は、他にないと思ってるから」

「そう」

「お袋の手術が終わったら、どうするつもりだ?」


どうって、何が?

あたしは直哉の言葉が理解できず、首を傾げる。


「うちに残って、心臓外科医として働くか?それとも前の病院に戻って、救命医に戻るか?志乃の場合、選択肢は2つあるだろ?」


2つあると言ったが、どちらにもあたしはなる気はない。

これから医師として働くなら、あたしは救命医で居たい。

だからと言って、前の病院には戻りたくない。

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