恋愛の始め方
「それって・・・」

「志乃も暮らしてただろ?親父が作った診療所で。俺は、あそこでやりたいと思ってる」


あたしも、直哉と同意見だ。

あそこを知らない人間に、託したくはない。

だからと言って、あたしに出来るだろうか?

お父さんが目指していた、医療を。


「ごめん、直哉。すぐには決断出来ない」

「そうか。でも、頭の隅には入れといてくれ」

「うん」

「わりぃな、お袋の手術の前に」

「ううん、大丈夫。じゃ、そろそろ上がりだから」

「お疲れ」


直哉に労いの言葉を貰い、あたしは勤務を終えた。

お母さんの手術をまじかに控えているのに、焦りもなければ、不安もない。

それを、ベストコンディションと良いってモノなのか?わからない。

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