恋愛の始め方
終わった。

休憩室の椅子に腰かけ、あたしは安堵のため息を零す。


「お疲れ」


そんなあたしに、直哉が声を掛ける。

それに、あたしは小さく頷いた。


「手術は成功した」

「あぁ。見てた」

「これで、目が覚めれば良いけど」


あたしの言葉に、直哉は小さく苦笑いをする。


「どうなるだろうな。このまま何も変わらず、お袋の一生は終わっちまうのかなぁ」


弱音にも聞こえる、直哉の本音。


「でも、無駄じゃなかったよな?必要な、手術だったよな?」


自分に言い聞かせているのか?

それとも、あたしに聞いているのか?

どちらとも取れる、直哉の言葉。

その言葉の意味を、あたしも探す。

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