恋愛の始め方
「直哉が言うように、このまま目が覚めなくて、お母さんが一生を終えたとして、誰に責める権利があるの?あたし達は、子供としても、医師としても、最善を尽くした」

「・・・志乃」

「それに、まだ目が覚めてないだけで、お母さんは死んでるわけじゃない」

「だな」


あたしは両手を上にあげ、伸びをする。


「じゃ、お疲れ」


そして、あたしはその場を後にしようとする。

そんなあたしのことを、直哉は引き留める。


「志乃、海外に行くな」


直哉の言葉に、あたしは歩みを止める。


「お前だから、頼みたい。お前しか、頼めねぇ。頼む、志乃。親父の後任になってくれ」


直哉は深々と、あたしに頭を下げた。

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