恋愛の始め方
「ちょ、ちょっと、止めてよ」


頭を下げる直哉の元に駆け寄り、頭を上げるように促す。

それでも、直哉は中々頭を上げようとはしない。


「引き受けてくれ」


あたしは、押しに弱い。

それは、自分でもわかって居る。

でも嫌なことは嫌と、ちゃんと突っぱねることも出来る。

今のあたしは、ただ自信がなくて揺らいでいるんだ。

引き受けたいのは山々だが、お父さんのようになれる自信がない。

あたしくらいの腕の医師なんて、探せばゴロゴロいる。

だからあたしじゃなく、他の医師の方が良かった。

そう思われるのが、怖いんだ。

だから、あたしは迷ってるんだ。

このまま一人で悩んだところで、きっと自分じゃ答えなんて出せない。

そう思い、あたしは今の気持ちを素直に直哉に打ち明けた。

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