恋愛の始め方
何事だろうと思い、診療所に様子を伺いに行った。

処置室に入ると、大量出血した女の子がいた。

お父さんは必死に処置を行うも、女の子の心臓が止まってしまった。

それでもお父さんは諦めず、処置を続けた。

もう、無理だ。

心肺停止から、15分が過ぎた。

あたしは女の子に近づき、死亡確認をする。


「9月14日午前2時12分、死亡確認」


あたしの言葉を聞き、お父さんはやるせない表情を浮かべた。


「ごめんな、助けてやれなくて」


亡くなったばかりの女の子に、お父さんはそんな言葉を掛けた。

医師になり、何人もの死を見てきた。

その度に、人の死に対して鈍くなっていく。

いつしか、人の死が当たり前のような感覚になっていた。

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