恋愛の始め方
そこにやって来た、女の子のお母さんの両親。

動こうとしない自分の娘を、両親が宥めながら連れて帰ってくれた。


「人殺し！」


鋭い瞳で睨み付け、そんな言葉を残して。

意味がわからなかった。


「八つ当たりじゃん」


お父さんと２人きりになった診療所で、あたしはそんな言葉を吐き捨てた。


「志乃も、変わったな」

「それ、どういう意味？」


お父さんの様子を見て、良い意味じゃないことはわかっていたが、直接本人に聞いた。


「お前も医者になっちまったんだな、俺の嫌いな」


意味がわからない。


「お父さんだって、医者じゃん」

「あぁ、そうだ。今の志乃は、昔の俺だ」


昔の？

昔と、今のお父さんは何が違うのだろう。

< 87 / 404 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop