恋愛の始め方
「医者は神じゃない」

「あぁ。でも、俺は神の医者になりたいと思うよ」


神の医者って、ありえないでしょ。


「良い年して、夢見すぎ」

「そうか。でも、さっきみたいに「人殺し」って言われるよりはマシだろ?」


それは、そうだけど。


「無力だ」


独り言のように、お父さんは自分の手を見て呟く。


「人なんて、無力だよ」

「ホント、お前は」


そう言い、お父さん笑みを溢した。

気付けば、日が昇っていた。


「今日帰るんだよな?」

「帰るよ。戻ってくるなって、言われたから」

「まだ根に持ってんのか?」

「別に」
 
「後3年、あっちで勉強してこい。3年経って、まだ帰って来たかったら、その時はうちの診療所頼むよ。俺も年だからな」


お父さんは、優しくあたしの背中を叩いた。

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