恋愛の始め方
「そう言ってくれるのは、あたしからしたら嬉しい。今の救命の状態で、看護師が減るのは正直キツいし。でも、良いのかなぁって思う節もある」

「なんで?」

「だって、せっかく志乃が頑張って医師になったのに、諦めるのって勿体無い感じがする」


勿体無い、か。

そんな風にあたしの努力を認めてくれる人がいるだけ、あたしは恵まれてる。


「看護実習で忙しいのに、時間見つけては勉強してたじゃん。その時、思ったんだよね。志乃は、きっと良い医師になるんだろうなって」


あたしは一瞬でも、良い医師になれたのだろうか?

そんな風に思えたことなんて、一瞬もなかった。

早く一人前の医師になりたくて、常に必死だったあの頃。

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