恋愛の始め方
ただただ数多くの患者を見て、人の生死を問う場でも妙に冷静に処置をしていた。

それが、あっちでは優秀な医師に値した。

名誉に更々興味は無かったが、その評価のおかげで、沢山の症例をこなせた。

上に行けば行くほど、数多くの患者を見れる。

その時のあたしは、人を助けると言うよりは、自分の自己満足の為に患者を診ていたと思う。

お父さんが目指していた医師とは、真逆の医師にあたしはなっていたんだ。


「ねぇ。良い医師って、何なんだろうね」

「そんなの、看護師のあたしにわかる訳ないじゃん」


かなはそう言い、笑った。

その答えは、誰に聞いたら教えてくれるのだろう。

医師に戻りたいわけではないが、その答えを知りたいと望んでしまうのは、何故なんだろう。

< 96 / 404 >

この作品をシェア

pagetop