恋愛の始め方
「そっか。なら、聞ける医師は、院長しかいないね」

「院長って、簡単に聞ける相手じゃなくない?」

「確かに。今の病院に入って、あたし院長と話したことなんてないし」


あたしだって、面接の日に会ったのが最初で最後だ。

それ以降、院内でも会ったことない。


「院長って病院にいるの?」

「いるとは思うけど、救命にいる以上会うことは滅多にないね」


そうなんだ。

なら、あたしも当分お目にかかることはないのだろう。

それから話は変わり、仕事や30歳まじかの老化の愚痴へ移った。

話に花が咲き、進むアルコール。

お互いに自分の限界値を、とうに超えていた。

飲み過ぎだとわかっていても、次の日休みだという事もあり、お酒に手が出てしまう。

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